今回の投稿では、相続手続きの流れについて解説させていただきます。相続手続きをしなければならなくなった人に向けて、相続手続がどんな流れで進むのか分かりやすく解説していくのでご覧下さい。
※今回は、遺言書がない場合の手続きを想定しています。
それではいきましょう。
相続手続について
相続の手続は、亡くなられた方(被相続人と呼びます。以下、被相続人と呼びます。)の意思と財産を引継ぐ大切な手続きになります。
「誰が」「どんな財産を」相続するか決めるために多くの手続きが必要になります。
その中でも主になる手続は「相続人調査」と「財産調査」です。
今回は「相続人調査」と「財産調査」を中心、相続手続きの流れについて順を追って説明します。
相続手続の流れ
大きくまとめると、次の5つに分類することができます。
1.相続人調査
2.財産調査
3.遺産分割協議
4.遺産分割協議書の作成
5.各種財産の名義変更
以上の流れで相続手続を進めていきます。
次は、1.相続人調査から順番にどんな手続きを行うのか確認していきます。
1.相続人調査
まずは、相続人調査を行い誰が相続人になるか確定させることから始めます。
相続人調査は、相続人を確定する重要な手続きになります。
相続人が誰になるか確定させるためには、被相続人の戸籍を調べます。(詳しくは後日解説します。)
市区町村役場で、被相続人の出生まで遡った全ての戸籍を集めます。
※相続人の確定を間違えてしまうと、後に行う遺産分割協議が無効になってしまうため、確実に戸籍を集める必要があります。
相続人が確定したら、相続関係説明図(相関図とも呼びます)を作成します。
相続関係説明図は、被相続人の相続人の関係をまとめた簡易家系図のようなものと考えて下さい。
相続関係説明図のサンプルを作成しました。この相続関係説明図は、相続人が配偶者と子が1名の場合を想定しています。
相続関係説明図には、決まった書き方がありません。
よって、作成者によって多少は異なりますが、大体同じ書き方になります。
かつては、相続関係説明図と戸籍一式を提出して相続登記や金融機関等での手続きを行っていましたが、現在は後ほど紹介する「法定相続情報一覧図の写し」の提出に代えることができるため出番が減りました。
しかし、複雑な相続であってそれを説明するためには、相続関係説明図があった方が話がスムーズに進むため作成することをオススメします。
法定相続情報一覧図を作成する
法定相続情報一覧図は、法務局へ被相続人の戸籍等の必要書類と一緒に提出し法務局の登記官の認証を受けることで、戸籍一式と置き換えることができます。
法務局や金融機関等の手続きの際に、戸籍の束の提出にかえて「法定相続情報一覧図」1枚の提出で済みます。
法定相続情報一覧図のサンプルを作成しました。今回の例はで、相続人が配偶者と子が2人の場合を想定しました。
法定相続情報を作成する際は、法務局のホームページでテンプレートを用意してくれているのでこちらを使えば簡単に作成できます。
法定相続情報証明制度を利用することで各所での戸籍の確認の時間短縮につながります。仕事や家事等で忙しい人には是非取得をオススメします。
以上で相続人調査は終了です。
相続人調査のまとめ
1.必要な戸籍を市町村役場で集める。
2.相続関係説明図を作成する(特に複雑な相続手続きの場合)
3.法定相続情報一覧図を作成し、法務局で認証を受ける
以上で相続人調査は終了です。
次は、もう一つの主となる財産調査の解説に移ります。
2.財産調査
相続人が確定したら、被相続人の財産調査に移ります。
相続税の申告等の期限が迫って急いでいる場合は、相続人調査と財産調査を同時進行で行います
財産については、財産ごと調査をします。
まずは、不動産から調査していきます。
不動産の調査
1.所有物件のリストアップをするために、市区町村役場等で以下の書類を集めます。
・名寄帳
名寄帳(なよせちょう)は、市区町村内の課税対象となっている固定資産を所有者別にまとめたものです。
基本的には、被相続人の不動産は市区町村ごとに名寄帳を集めることで把握することができます。
・固定資産評価証明書
固定資産評価証明書は、相続登記をする際に必要になります。
取得場合が同じ窓口なので、ここで取得すれば手間が省けます。
※固定資産評価証明書は年度で価格が改定されるため、相続登記が年度をまたぐ場合は新年度の固定資産評価証明書が必要です。
名寄帳と固定資産評価証明書を照合することで、より正確な不動産調査ができます。
2.各物件の内容確認するために、法務局で登記事項証明書と公図を取得します。
登記事項証明書と公図は、法務局で取得します。
窓口はもちろん、法務局のホームページからオンラインで取得することができます。
詳しくは、法務局ホームページをご覧ください。
預貯金の調査
各金融で残高証明書を取得します。
残高証明書の取得に必要な書類は、各金融機関によって多少異なりますが次の書類が必要になります。
・通帳
・口座の持ち主(被相続人)が亡くなった事実を証明する書類
→法定相続情報一覧図、除籍謄本、住民票の除票等
・相続人であることが確認できる書類
→法定相続情報一覧図、被相続人の戸籍一式等
・手続きする相続人の実印+印鑑証明書
詳細は、各金融機関のホームページ、電話、窓口等でご確認して下さい。
株式・投資信託の調査
各証券会社が発行する取引残高報告書を確認して、証券会社から残高証明書を取得します。
残高証明書の取得に必要な書類は、金融機関とほぼ一緒です。
こちらも、各証券会社によって多少異なりますが、残高証明書の取得は次の書類が必要になります。
・口座の持ち主(被相続人)が亡くなった事実を証明する書類
→法定相続情報一覧図、除籍謄本、住民票の除票等
・相続人であることが確認できる書類
→法定相続情報一覧図、被相続人の戸籍一式等
・手続きする相続人の実印+印鑑証明書
詳細は、各証券会社のホームページ、電話、窓口等でご確認下さい。
保険の調査
被相続人がどんな保険に入っていたか知らない場合は、以下の方法で調べます。
被相続人の保険の調べ方
・保険証券を探す
・銀行の通帳、クレジットカードに保険会社の履歴がないか確認する
・保険会社から定期的に郵送される「契約内容通知書」「生命保険控除証明書」等を探す
・一般社団法人生命保険協会の生命保険契約照会制度を利用する(契約の有無のみ照会が可能)
以上の方法で、被相続人の保険を確認する事ができます。
生命保険について
生命保険は、受取人の固有の財産となり遺産分割の対象になりません。
また、受取人を「法定相続人」としてある場合は、法定相続分の割合いで相続人の財産になります。
※受取人が既に死亡している場合は、受取人の相続人が受取人になります。
保険請求は3年で時効によって消滅するため、先延ばしせずに手続きを行って下さい。
財産目録の作成
被相続人の全ての財産が調査が終了した後、その財産をまとめた財産目録を作成します。
財産目録には、決まった書き方はありませんが、以下の情報は記載しておきましょう。
※財産目録には、負債も記載します。例)住宅ローン、銀行からの借入金
土地(登記事項証明書より記載)
・所在、地番、地積、地目、固定資産評価額
建物(登記事項証明書より記載)
・所在、家屋番号、種類、構造、床面積、固定資産評価額
預貯金(残高証明書より記載)
・銀行名、支店名、預金の種類、口座番号、死亡日の残高
株式・投資信託(残高証明書より記載)
・証券会社名、支店名、銘柄、保有数、死亡日の評価額
保険(原則は相続財産ではないが、記載する事が多い)
・保険会社名、保険の種類、証券番号、金額
その他の財産・負債
その他の財産や負債がある場合は、記載します。
財産目録は、裁判所のホームページが掲載してくれているのテンプレートを使って作成すると上手くまとまります。
財産調査の解説は以上になります。財産調査まとめます。
財産調査のまとめ
・不動産は、名寄帳と固定資産評価証明書で物件をリストアップし、登記事項証明書と公図で内容を確認する
・預貯金と株式・投資信託は、各機関で残高証明書を発行してもらい内容を確認する
・保険は、受取人の固有の財産になる
・各財産を財産目録にまとめる
これで、相続人と被相続人の財産が確定しました。
次は、誰がどの財産を取得するか決めていきます。
3.遺産分割協議
相続人全員で、誰がどの財産を取得するか話合いをします。
これを、遺産分割協議と呼びます。
遺産分割協議は、相続人全員で行わなければ、遺産分割自体が無効となってしまいます。
遺産分割協議と聞くと相続人全員が同じ場所に集まって話合いをするイメージがあると思いますが、実は明確な決まりはありません。
そのため、相続人が海外等の遠方にいる場合は、zoom等のオンラインでのやり取りも可能です。
各ご家庭にあった方法で、遺産分割協議を行えばいいと思います。
大切ことは、全員が参加し全員で話合って決めることではないかと思います。
4.遺産分割協議書の作成
遺産分割協議で決まった内容を基に遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書も先程の財産目録と一緒で決められた書き方はありません。
しかし、遺産分割協議書は後ほど紹介する相続財産の名義変更の際に必要になるので必要な項目を紹介します。
遺産分割協議書の必須項目
被相続人について
・氏名、本籍、最後の住所、生年月日、死亡日
土地について
・所在、地番、地目、地積
建物について
所在、家屋番号、種類、構造、床面積
預貯金について
・金融機関名、支店名、預金の種類、口座番号
株式・投資信託について
・証券会社名、銘柄、取得数(○○株又は○○口)
署名+押印
最後に、住所と氏名を自書で記し、実印を押します。
以上の内容を遺産分割協議書に記します。(詳しくは後日投稿させていただきます)
文字だけでは、イメージしにくいと思いますので、インターネットで「遺産分割協議書」を検索して頂くと画像でも確認できるので是非検索してみてください。
5.財産の名義変更
遺産分割協議書の作成が終ると次は財産の名義変更に移ります。
不動産について
・不動産の名義変更は、相続登記になります。相続登記は、法務局で手続きをします。
※登記申請の詳細は、法務局や司法書士に相談してみて下さい。
必要書類について
必要書類については、法務局のホームページで確認して頂く事ができます。
農地・山林をお持ちの方へ
・農地の相続人は、相続登記した後、各市町村の農業委員会へ届出(農地法第3条の3第1項の規定による届出)をします。
窓口は、各市町村の農業委員会になります。
また、農地が土地改良区の受益地なっている場合は、別途「組合員資格得喪通知」を提出する必要があります。
・山林の相続人は、登記をした後、各市町村長へ「森林の土地所有者の届出」をします。
農地・山林の相続人は、相続登記は別に以上の届出が必要になります。
届出をしないと、10万円以下の過料を科される場合があるので注意して下さい。
預貯金・株式・投資信託
必要書類について
・各機関の相続に関する依頼書
・法定相続情報一覧図
・相続関係説明図(担当者への説明に使うと申請がスムーズに進む)
・遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑証明書
以上が必要書類になります。また、手続きをする前に、事前に各機関のホームページや電話等で必要書類等について確認していただくとより確実に手続きが行えます。
名義変更が終ると相続手続きは終了になります。
まとめ
相続手続きのまとめです。
1.相続人調査
・被相続人の戸籍収集し、相続人を確定させる
・相続関係説明図の作成
・法定相続情報一覧図の作成と法務局での認証手続き
2.財産調査
・各財産のリストアップ・内容確認
・必要書類の収集
・財産目録の作成
3.遺産分割協議
・誰がどの財産を相続するか話合いをする
4.遺産分割協議書の作成
・遺産分割協議を基に、その内容をまとめる
5.各種財産の名義変更
・不動産は相続登記をする(農地・山林は別途届出が必要)
・その他の財産は、各機関で手続きを行う
以上になります。
今回は相続手続きの流れについて解説せてもらいまいした。
今回の記事通りの流れで相続手続きをすれば、順調に手続きが進みます。
手続きの全てを1つの投稿にまとめると、とても長い投稿になってしまいます。
そのため、詳細については順次投稿させていただきますので、ご確認下さい!
今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
長野県行政書士会所属
行政書士あさくら事務所 代表行政書士 朝倉祐作